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蜩(ヒグラシ)の宿─にの江大江戸人情帳─

第6章 盗賊始末騒動編


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にの江「まあ、確かにねぇ

あれだけの大店なんだから、用心棒の一人や二人、雇っても良いようなもんだけど…

…アソコの大女将も、結構な渋ちんみたいだからねぇ(笑)」


大倉「……笑い事では御座いませんよ……

……拙者はその話を聞いてからこっち、お智さんの身が心配でおちおちして居られないのですから……」


にの江「まあねぇ、気持ちは解るけど」


大倉「そこで、で御座いますが

拙者、ちぃと良い案を思い付きまして……」




大倉さんは、あたしが大倉さんの話しに同調するや否や、待ってましたとばかりに身を乗り出して言った




にの江「なんだぃ、良い案ってのは」


大倉「ええ、ですからその……拙者が、ですな……用心棒を買って出ようかと……」


にの江「大倉さんが、かい?」


大倉「はい

拙者も、道場があります故、日中は警護に当たる事は出来かねますが

押し込み強盗が出るのは夜で御座いましょう

然らば、拙者が夜、お智さんの寝所を見張っておれば安心かと…」


にの江「お智ちゃんの寝所だって?」


大倉「いいいいや、よよ邪な気持ちはこれっぽっちも御座いませんよ!?

拙者はただ、お智さんの身を案じて…」


─ガラガラッ

「ご、ごめんくださぃ…////」




寝所と聞いて渋い顔をするあたしを見て、大倉さんが大慌てで言い訳し出した所で

勝手口の戸が開く音がして、噂の美人女将の声がした




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