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蜩(ヒグラシ)の宿─にの江大江戸人情帳─

第6章 盗賊始末騒動編


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(…いい加減、“おーくら”って呼び捨てさせるのは止した方が良いかしらねぇ(苦笑))




あたしは微妙な顔をしている大倉さんを見てちょっと苦笑いすると、侑李に言った




にの江「侑李や、ははさまは大倉さんとちょっと込み入った話があるから、奥の座敷におりますからね

お前はここで、繕い物の続きをしといておくれ」


侑李「はい、ははさま、わかりました///」




侑李はあたしに用事を言いつけられると、嬉しそうに返事をして

また真剣な面もちをしながら繕い物に取りかかった



あたしはそんな可愛い愛息子の背中に、くれぐれも怪我には気をつけるんだよと言い残し

大倉さんを伴って居間の奥の座敷へ向かった








にの江「………で?

気掛かりな事ってのは何だい?」




奥座敷に腰を下ろしたあたしは、大倉さんに座布団を差し出しながら話を切り出した




大倉「はい、ですから……お智さんの事なのですが……」




大倉さんはまだバツが悪そうにしながら、こめかみの辺りをぽりぽりと掻いて話し始めた




大倉「先程も申しました通り、にの江さんの蜩のお宿は、相葉さんって言うこの上もなく頼りになる用心棒がいらっしゃるから安心でしょうけれど

聞くところによりましたら、お智さんのいらっしゃる薬種問屋では用心棒の1人も雇っていないとか

しかも、お智さんは悪阻が酷くて寝込んでらっしゃると言うではないですか

それを、あの頼りなさげな若旦那が一人で護衛してるって聞いて……そんな事では、強盗に押し入られた日には一溜まりもないと…」




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