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蜩(ヒグラシ)の宿─にの江大江戸人情帳─

第5章 神隠し騒動編


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雅吉「………にの江」

にの江「あんたが……あんたにもしもの事があったら……

……あたしは……あたしと侑李はどう………ん////」



雅吉は、あたしの泣き言を

そっとその唇で封じた



雅吉「へへ……なんだかしょっぺぇや(笑)」



唇を離して、雅吉が何時もの調子でへらへらと笑う

あたしはそんな雅吉を、上目遣いにチロッと睨んだ



にの江「もぅ……ばか////」

雅吉「心配すんな、にの江……もう、お前や侑李に心配をかける様なことはしねぇから」



雅吉はそう言って、ふざけた顔から一転して真面目な顔をすると


流れ続けるあたしの涙を拭った



にの江「……雅吉……」

雅吉「にの江、愛してるぜぃ

今の俺にとって、お前と侑李よりも大事なもんは、何にもありゃしねぇ

……自分の、ちっぽけな意地よりも、な。」

にの江「まさき……ち……………あ////」






もう、あたしと侑李に心配かける事はないだとか

自分のちっぽけな意地だとか



ちょっと意味深いことを言う雅吉に、それを問いただそうとしたものの



その台詞は、全部吐息になって真っ暗な夜の闇に紛れて消えてしまった





そうしてあたしは、訊きたかった事を綺麗に忘れて


ずっと家に入り浸っている割には久方振りの、雅吉の優しい愛撫に溺れた







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