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蜩(ヒグラシ)の宿─にの江大江戸人情帳─

第5章 神隠し騒動編


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にの江「……でも、あんたのお陰でみんな無事だったんだ……その位の掠り傷で済んで良かったじゃないのさ」



袖が破けた着物を脱がして、新しい着物を着せてやりながらあたしがそう言うと

あたしのなすがままに着物を脱ぎ着させられている雅吉が

また少し情けない顔で笑った



雅吉「なんだょにの江

さっきはコレの何処が掠り傷なんだとかぬかしてた癖にょ(笑)」

にの江「……それでも、掠り傷だょ」



あたしは言いながら、着替えが済んだ雅吉の胸に、顔を埋めた



雅吉「なんだぃそりゃあ、どういう事だぃ?」



雅吉はそう言ってあたしを片腕で抱くと

そのままあたしを、そっと寝床に押し倒した



にの江「だって……相手は、やばい商売をしてる輩の用心棒だよ?生半可な腕じゃ勤まらないだろぅ?

…その用心棒相手に、あんた以外の男だったら、きっとそんな怪我じゃあ済まなかったハズさ

……だから、そいつは掠り傷だょ」

雅吉「………にの江」

にの江「…………でも」



あたしは優しく体中を撫でる雅吉の手を取って、その手に唇を寄せると


ため息と一緒に本音を吐きだした



にの江「……あんたが死んじまうかもしんないなんて冷や冷やすんのは

……もう、金輪際御免だょ////」




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