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蜩(ヒグラシ)の宿─にの江大江戸人情帳─

第5章 神隠し騒動編


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雅吉が悪党をやっつけている間に、なかなか抜け目がない大倉さんが岡っ引きを呼びに行ってくれたお陰で

人買い一味と子供屋は、敢えなく御用となった



それから、翔吾さんと恋太郎ちゃんを家に送り届けたあたしと雅吉は

うちの可愛い大事な息子の侑李を連れて、我が家へと帰ってきた



家につくとすぐに、あたしはもう夜もどっぷり更けちまったからと、侑李を寝かしつけたのですが


侑李は、色々あって疲れすぎたのか

床に入ってもなかなか眠れずにむずかっておりました



…でも

あたしが一緒に寝床に入って、抱き締めた背中をさすってやっていると


やがて安心したように、静かな寝息を立て始めて

すやすやと眠りに就いた








雅吉「侑李は寝付いたのかぃ?」



侑李がよく寝ているのを確認して、雅吉がいる寝所へ戻ると

寝床の上に胡座をかいて座っていた雅吉が、ちょっと顔を傾けて言った



にの江「ああ………それより、早くその腕をお出し」



あたしは、雅吉が自分の片手で押さえている、袖が千切られた方の腕を見ながら薬箱を取り出した



雅吉「薬なんざ要らねぇよ、こんな掠り傷

唾でも付けてりゃあ治らぁな」

にの江「…………そんなに、深い傷なのかぃ?」



あたしは傷口を見せたがらない雅吉を見て、眉を寄せた



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