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蜩(ヒグラシ)の宿─にの江大江戸人情帳─

第5章 神隠し騒動編


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それを訊いて、ちょっとなよっとした感じの男が目を丸くした



「怪しい話し声ですって?」

見張り「へぇ、そうなんすよ子供屋の旦那」



(子供屋?…じゃあ、あの男が侑李と恋太郎ちゃんを…)



そのなよっとした男が『子供屋』と呼ばれるのを聞いて

この女の腐ったのみたいなおっさんがあたしの可愛い侑李を拐かした黒幕かと

あたしは奥歯をギリギリと噛み締めてジロリとソイツを睨み付けた



そんなあたしの視線を感じてか


子供屋のおっさんは、着物の袖口で口を押さえながら

キョロキョロと世話しなく辺りを伺い始めた



子供屋「まさか、御上じゃなぃでしょうね!

せっかく滅多にお目にかかれない様な上玉を、二人も見つけたって言うのに

御上にバレたら水の泡じゃないさ!」



すると

焦る子供屋の後ろに控えていた用心棒の男が、ニヤニヤ笑って手押し車の横に立つと言った



用心棒「いやぁ、御上なんかじゃあねぇと思いますぜ、旦那」



手押し車の横に立った用心棒は、そう言ってニヤリと笑うと

手押し車の上の荷を肘でつついた



用心棒「恐らくソイツぁ、コイツの親父の人斬り野郎だと思うがねぇ…

…おい!そうなんだろう、えぇ?

人斬り雅之進さんよぅ!!」



用心棒は今度は大声でそう言うと、ばしんと積み荷を叩いた


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