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蜩(ヒグラシ)の宿─にの江大江戸人情帳─

第5章 神隠し騒動編


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雅吉「にの江っ!!お前さんいったいどうしたんでぃ!?

なんかあったのか!!?」



ぼんやりと外を眺めたまま、ぐったりと死んだ様に動かないあたしを見て


『夜釣り』から帰って来た雅吉が、焦った様にあたしに駆け寄り脱力しきったあたしのカラダを抱き締めた



雅吉「にの江!しっかりしろにの江!!

いったい何があったんでぃっ!!」

にの江「…………り……が…………」

雅吉「あ?何?」

にの江「……ゆ……り、……が………」

雅吉「ゆり?……お?そう言やぁ侑李はどうしたんでぃ?

ここんとこ腰巾着みてぇにずっと傍に連れて歩いてたのによ……恋太郎んとこにでも遊びに行ったのか?」

にの江「……恋太郎……?

……あぁ、そうだ!!まだあそこは捜してなかったよっ!!」



雅吉から恋太郎ちゃんの名前を聞いて

あたしはもしかしたらしばらく逢えていない恋太郎ちゃんに逢いに行ったのかもと思い、ガバッと立ち上がった


でも、散々っぱら走って泣き喚いた所為か、脚がふらついて倒れそうになってしまった



にの江「あっ…」

雅吉「おっと」



よろめくあたしを、雅吉の逞しい腕が抱き止める



雅吉「大丈夫かぃ、にの江?」

にの江「大丈夫だよっ!それより早く恋太郎ちゃんとこに…」

雅吉「………もしかして、にの江よ……侑李が神隠しに遭ったなんて言うんじゃねぇだろな?」

にの江「!!!////」

雅吉「……やっぱりそうかぃ」



“神隠し”と聞いて、目を見開き雅吉の顔を凝視するあたしを見て

雅吉がため息をついた



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