第5章 神隠し騒動編
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あたしは、侑李を捜して江戸の町を必死に走った
可愛い我が子の名を呼びながら、暗くなった町をひた走り
あの可愛い姿を求め捜した
でも
どれだけ声が枯れる程名前を叫んでも
どれだけ脚がもつれる程走って捜しても
あたしの可愛い侑李の姿を見つけることは出来なかった
にの江「……何故……なんでだぃ……
……神様があたしの元に、あの子を引き合わせて下さったんじゃぁ無かったのかぃ……
……何故……何故……なんで今更あたしからあの子を取り上げなさるって言うんです…!!///」
あたしは重たい脚を引きずって家に戻りながら
せっかく授けて下さったと思った我が子を奪ったのかも知れない神を呪って、泣いた
それでも
もしかしたら、先に家に帰ったのかも知れないと言う淡い期待を抱いていたあたしは
誰もいない家へ辿り着き、また途方に暮れた
そして、さっきまでわいわい三人で騒いでいた奥座敷に座り込むと
可愛い侑李の着物を抱いて、大声でその名を呼びながら、ずっと泣いていた
雅吉が、自称『夜釣り』から戻ったのは
散々泣いたあたしが、声も涙も枯れ果てて
脱力して、死人みたいにぐったりと奥座敷の襖にもたれ
暗くなった外をただぼんやりと眺めて居た時だった
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