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蜩(ヒグラシ)の宿─にの江大江戸人情帳─

第5章 神隠し騒動編


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「時分刻に失礼仕ります…相葉さんはご在宅でしょうか?」



夕餉の支度をしにお勝手へ向かっている途中で、勝手口の方から雅吉を訪ねる声がした



(あの声は大倉さんかしらねぇ?)



それにしたってこんな夕飯時に一体何の用だろうと思いつつ

あたしは勝手口に向かって言った



にの江「はぁい、どちらさんだぃ?」

大倉「あぁ、にの江さんですか?すみません、大倉です(汗)」



(やっぱりそうだったのかぃ(笑))



あたしは、遠慮がちに返事をする大倉さんの声にちょっと笑いながら、勝手口の戸を開けた



にの江「どうかしたのかぃ?こんな時分に」

大倉「えぇ、ちょっと相葉さんに聞いて頂きたいお話しが御座いまして…(汗)」



言いながら、やたらにキョロキョロと周りを気にする大倉さん

どうも何だか様子がおかしい



にの江「聞いてもらいたい話しねぇ………そりゃあ、こんな時分にしなくちゃなんなぃ話しなのかぃ?」

大倉「えぇ、まあ…この時間でないと、都合が悪いと申しますか…何と言いますか…(汗)」

にの江「そうかぃ……雅吉なら居間で侑李と遊んでるよ

どうぞ、上がって下さいな」

大倉「左様ですか、では、失礼して…」



大倉さんは、何故だか妙におどおどしながからそう言うと

脱いだ草履を懐に仕舞って、居間へ向かった



にの江「……へんな人だねぇ、何をビクビクしてるんだか(苦笑)」



あたしは苦笑いして大倉さんの背中を見送ってから、夕餉の支度に取りかかった




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