第4章 禅寺人斬り騒動編
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雅吉「前に行った時にょ、お殿様のお加減が悪りぃって話を聞いてょ
ご病気かって訊いたら、どうも、数いる側室に若君をたんとこさえて
それが祟ったんじゃねぇかって話だ、なんて言っててよ」
にの江「数いる側室に…若君」
雅吉「んで、ちょぃとピンと来てよ
昨日、忠義に詳しい話を訊いたらょ
どうやら、お殿様はいよいよ危ないってのに、まだ跡目が決まってねぇって話しだったのさ」
にの江「…………」
あたしは、雅吉に耳を塞がれてキョトンとした顔で雅吉を見上げている侑李ちゃんをじっと見詰めた
雅吉は、そんなあたしを見て一拍置いて
話しの続きを語り出した
雅吉「んでよぉ
跡目が決まってねぇ原因をそれとなく訊いてみたらよ
五人もいる側室に、それぞれ1人ずつ若君がいるからだって言うじゃねえか」
雅吉は、まだじっと自分を見ている侑李ちゃんを見て、ニイッと笑った
雅吉「……しかもょ、みぃんな同じ歳と来たもんだ
正室に若君がありゃあ良かったんだろうが
正室との間に産まれたのは姫ばかりで、みんなとっくに余所に嫁いじまったらしいぜぃ」
にの江「…………そう」
雅吉「ああ。………よ、侑李
耳、痛くねぇか?」
雅吉は、ソコまで話すと侑李ちゃんの耳から手を離した
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