第4章 禅寺人斬り騒動編
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雅吉「………侑李は寝たのかぃ?」
侑李ちゃんが完全に寝入るのを見届けて寝室に戻ると
雅吉が寝床の上に肘をついて横向に寝転んで居た
にの江「あぁ、ぐっすりと良く眠ってるょ」
あたしは言いながら
寝転んでいる雅吉の懐にスッと収まると、雅吉が枕にしているその腕の隙間に頭を突っ込んだ
雅吉「なんだょ、にの江
甘えやがって(笑)」
にの江「……あたしの周りには、どうしてこう、母親に恵まれない人間ばっかりが集まるんだろうねぇ」
雅吉「……ん?」
にの江「………何でもないよ」
あたしは、曖昧に笑ってはぐらかすと眼を閉じた
あたし自身、母親を早くに無くしていた
そして、お智ちゃんも、…侑李ちゃんも
亡くなり方は違えど、やはり幼少の頃に母親を亡くしている
(…そう言えば、雅吉の両親はどうしてるんだろう)
自分の身の上話を好んでしない雅吉は
自分の生まれ故郷の話も、両親の話も一切したことが無かった
そんな雅吉に、あれやこれやと過去を掘り下げて訊くほど、あたしも野暮じゃなかったから
雅吉の過去について訊ねたり詮索したりすることは、一度もしなかった
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