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蜩(ヒグラシ)の宿─にの江大江戸人情帳─

第3章 養子騒動編


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潤之助さんに勧められるままに、ゾロゾロと皆で座敷に上がると


座敷の上座に若様が収まって

その脇に我が子を大事そうに抱いたお智ちゃんが座り、その前に潤之助さんが陣取った



あたしらは、その前に一列に並んで座り、頭を下げた



若様「皆さん、どーしてお辞儀してるあるか!それでは顔が見えないあるよ!話は、眼と眼を合わせてするものあるっ!!」



一同が自分に頭を下げているのを見て、若様が素っ頓狂な声をあげる


それを受けて、潤之助さんがちょぃと苦笑いしながら言った



潤之助「皆様、面をお上げ下さい

若様は、堅苦しいのがお嫌いであらせられます故」



潤之助さんの言葉に、皆が戸惑いながら顔をあげる



潤之助「……さて、何処からお話ししたものか……

全ては、若様がお国入りをして、海へ遊びに行かれた事から始まったのですが……」

にの江「じゃあ、そこから話しておくれょ

あたしゃ、何がなんだかさっぱり解らなくて、気持ちが悪いったらなぃんだから!」

若様「おお、それはいけないあるよ!

潤ちゃん、そちに任すから、最初から全部話して聞かせてあげるあるよ!!」

潤之助「はっ。では、僭越ながら拙者が事の次第を最初からお話し致します」



潤之助さんは、恭しく若様に向かって頭を下げると、皆の方へ向き直った



潤之助「事の始まりは、今から一年程前

上様との御対面をすませて世継ぎとして認められた若様が、初めてお国入りをした時の事で御座いました…」





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