第3章 養子騒動編
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潤之助「では、拙者が留守の間、若様の事をしかと頼んだぞ」
「はっ!」
拙者はその日、御用があって若様のお側を離れ、村方に向かわねばならなかった
初めてのお国入りと言うこともあり、何時にも増して羽目を外され勝ちな若様の元を離れるのは、非常に不安ではあったものの
村方への御用も、公務の内
拙者は、致し方がないと自分に言い聞かせ
留守をする者にくれぐれも頼むと言い付けて、急ぎ御用を済ませるべく村方へと向かった
だがしかし
御用を済ませ帰って来てみると、事もあろうか若様が行方知れずになったと知らされ
拙者は急ぎ若様が我が儘を言って船を出したと言う海岸へ向かい
地元の漁師に頼み込み、荒れた海に船を出してもらい若様をお捜し申し上げたものの
ついにそのお姿を見付ける事は出来ず
その数日後、海辺に若様のお供で一緒に海へ出た者たちの土左衛門が上がり
家臣たちの間で、若様がお亡くなりあそばしたと騒ぎになりかけた
だが、お国入りしたばかりの若様が、海へ遊びで船を出した挙げ句にお亡くなりあそばしたとなっては、大名家の
ひいてはお国の沽券に関わる一大事
ここは取り敢えず、長旅でお疲れになった若様が、病を得て床に伏したと言う事にして
拙者は1人、若様の行方を捜す旅に出た
しかしながら、いくら脚を棒にして国中を探し回っても、一向にその行方の手掛かりすら掴めず
虚しく月日ばかりが過ぎて行き
もうこれは、国に若様の消息を得る手掛かりは無いと見限った拙者は
とうとう、海を渡って異国へ捜しに行く決意をした
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