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蜩(ヒグラシ)の宿─にの江大江戸人情帳─

第3章 養子騒動編


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傅く潤之助さんの後ろには

なんと、病気で臥せっている筈の若様が立っていて


それを見たお侍たちは、まるで亡霊でも見たように恐れおののき

大袈裟にはは〜と声を上げながら平伏した



「こ、こここれは若様っ!…て、てっきりもう…」

潤之助「…海の藻屑となられたとでも、思っておられましたかな?」

「Σそ、その様なコトは…!!(汗)」



潤之助さんの刺すような視線に、お侍たちが更に深く頭を下げる


あたしはもう、訳が解らなくて

ポカンとなりながら潤之助さんに訊ねた



にの江「…一体、これはどう言うコトなんですかぃ、潤之助さん…」

潤之助「……話せば、長くなるので御座るが……」

若様「ちょっと待つあるよ潤ちゃん!」

にの江「潤ちゃん!?

ちょ、ちょっと待つあるよって……な、何をふざけてるんだぃこのボンクラ若様は…?」



突然、突拍子もない物言いをする若様を見て眼を丸くしたあたしを見て

潤之助さんが苦笑いをした



潤之助「ですから、これには話せば長い訳が御座いまして…(苦笑)」

若様「話せば長い訳の前に、娘さんが倒れてるあるよ!

助けてあげないと!!」

にの江「………はあっ!?(汗)」



眠り薬で眠ってしまっているのであろう自分の妹を指差して“娘さん”と呼ぶ若様


あたしの頭は益々混乱して来た



潤之助「かのお方は若様の妹君であらせられます、若様」

若様「ほう、そうだったあるか!!」

雅吉「あははは

こりゃあ、何だか面白れぇことになって来やがったなぁ(笑)」



あまりの若様の豹変っぷりに、その場にいた者たちが茫然となる中

雅吉が、またのんびりと笑った



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