第3章 養子騒動編
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雅吉「………しかし、それにしても……妙に静かだなぁ?」
抜き足差し足で母屋への通路を抜けて屋敷の中へ入ったものの
遠くで酒盛りをする声が聞こえる他は、全く物音が聞こえず
辺りは、不気味な程に静まり返っていた
にの江「…本当に、なんだか妙な感じだねぇ…」
雅吉「!!……ちょっと待ちな」
摺り足で先頭を切って屋敷の廊下を歩いていた雅吉が
渋い顔をして袂で口を押さえた
にの江「どうしたんだぃ?」
雅吉「……なんだか、妙な臭いがしやがる……
……これは……眠り薬か…?」
大倉「眠り薬ですと?………Σあっ!あれは…!?」
眠り薬と聞いて、しんがりを歩いていた大倉さんは、キョロキョロと辺りを見回すと
急に大声を張り上げた
にの江「だから、大きな声を出すんじゃない…」
大倉「お智さんっ!!!」
にの江「えっ…!?」
また大声を張り上げた大倉さんの指差す先を見ると
中庭を隔てた向こうの廊下に、お智ちゃんが倒れているのが見えた
よく見ると、その後ろの開いた襖の向こうで、見張りらしき男が二人倒れているのが見える
雅吉「そうか、お智ちゃんはきっと、眠り薬を持ってたんだな
それを恐らくは、香炉か何かにくべて見張りを眠らせたんだ」
にの江「……で、自分もその薬を吸っちまって寝むっちまったのかねぇ?(笑)」
大倉「の、呑気に笑っている場合では御座らんでしょう!!
お、お智さぁあーん!!」
にの江「だから、大声を出すなって言ってる…」
「何事じゃっ!!」
にの江「!!!」
ひとの忠告を悉く無視して、大慌てでお智ちゃんの元へ向かいながら張り上げた大倉さんの大声に
とうとう、酒盛りをしているお侍たちが感づいた
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