第3章 養子騒動編
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すると、門の中からひそひそと数人の男の声が聞こえて来て
俺は、忠義と一緒に、物陰に潜んだまま、その声に聞き耳を立てた
「……いいか、皆の者
くれぐれも、御子に御怪我をさせるでないぞ…
…慎重に、且つ迅速に智子姫様の御子をお連れするのだ」
「はっ、承知して御座います」
「…時に、御子がかの場所に居られるのは、確かなのであろうな?」
「はい
先ほど手の者が、確かにかの場所へ智子姫様が御子を預けに参られたとの報告が御座いました故
確かにかの場所においでになられる筈に間違いございません 」
「…うむ…
しからば、そろそろ良い頃合いの筈…
…よし、参るぞ!」
「はっ!!」
頭らしき男の号令の後
バタバタと裏門から数人の侍が出て来て
そいつらはそのまま、コソコソと足早に何処かへと向かって行った
雅吉「…………」
(智子姫に御子だって?
…お智ちゃんと恋太郎のことだな?)
恋太郎を連れて来るたぁ、一体どう言う魂胆なんだろうなんて首を捻っていたら
忠義が慌てふためきながら俺の着物の袖口を引っ張った
大倉「あ、相葉さん、今のは一体…」
雅吉「………忠義の、後を付けるぜぃ」
大倉「はいっ!」
どう言う訳なんだか確かめてやろうと思い
俺は忠義を連れて、侍たちの後を追った
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雅吉「……で、行き着いた先が、蜩のお宿だった、てぇ訳さ」
雅吉は、コトの顛末を話し終えると、組んだ腕を解いた
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