第189章 お母さんの頭の中
母
「座布団だけじゃないわ。
この家も骨董品やお皿1枚にしても
全てが高級品なの。」
「え!?」
母
「高級品はね、買ったら終わりではないの
メンテナンスにも莫大なお金がかかる…
だからお母さんね
この家を守る為にお婆ちゃんが
腹貸しをしなくなってからずっとパートをして
なんとかメンテナンス費用に当ててきたわ、
でもそれも貴女が高校2年生の時に限界がきた…
今だから言えるけど貴女が五条家の当主に
貰われる話は知っていたから、
貴女が家から出ていくのを止めなかった…
謝礼が欲しかったのよ。
正直話すけれど貴女のおかげでお母さん達は
おそらく死ぬまでお金には困らないわ。
それくらいの謝礼は頂いた...
娘を売って……」
お母さんは目に涙を浮かべてそう言いました。
「………」
母
「貴女がまた妊娠したと聞いて
…正直もう産んで欲しくないと思った。
お金じゃないのよ。
これはお金の問題じゃない…
貴女もお婆ちゃんみたいになって
あんな風になったら…可哀想で…」
お母さんが今までお金に煩かった理由も
妊娠中の私に酷いことを言ったことも
ようやく意味がわかりました。
馬鹿になる…生前の祖母は子供の私から見れば
優しくで無邪気で素敵な祖母だったけれど
高級な座布団を極貧なのに一気に購入したりと…
大人から見れば…普通じゃなかったのでしょう。
「もういいよお母さん。
私は売られたなんて少しも思ってないし
悟さんと夫婦になって可愛い子供達もいて
じゅうぶん幸せだから…
…お婆ちゃんに現れていた症状だけど
私も少しずつそうなってるの。
最近悟さんから指摘されたから間違いないと思う…
だけど…それを知ったからこそ自分でもいろいろと
気をつけようって思えたの。
だからこそ
この子を産んだら…もう産まないかもしれない。
でもね…新しい命を産み出すって素敵…
私の全てを持っていかれても
少しも惜しいって思わないんだもん。
守もちづるも…このお腹の赤ちゃんも…
皆んな大好き……」
私はお腹を撫でながら今までの妊娠と出産に
後悔がないとハッキリ言いました。