第3章 距離2
「んっ、ふぅっ…、ぁう、」
息ごと飲み込まれそうだ。入り込んできた舌は熱くて薄い。口内を蹂躙され、苦しさに涙がにじむ。
「んん、やっ、まっへ、ふぁ…」
歯列をなぞられ、舌の裏筋をなめられ背筋に震えが走る。何とか顔を横に向け、口を離そうとするも無理やり頬を掴まれまた舌を突っ込まれる。力つっよ。
いつの間にか苦しかった呼吸は、だんだんと違う苦しさへと変わっていった。
くち、とわざとらしく音を鳴らすのが憎い。っていうか、何でおれらキスしてんの?冷静になれば頭には疑問ばかりが浮く。けれどそんな頭に浮かぶ疑問も、上あごを舌先で擽られあっという間に散っていった。
「あっ…ふっ、そえ、やらって…」
肩がぴくんと揺れる。弱いところを執行に責められて、体から力が抜けた。
どのくらいそうしていたのか。時間にすればほんの数分。五条はようやく口を離したかと思うと、「それ」とおれの下半身を指さした。
「やっと勃ったな」
挑発気味に笑われて、カッと顔に熱が集中する。ばれてた。恥ずかしい。むかつく。
睨めば、んべっと舌を出された。その舌の赤さが憎くて中指を立てる。
「はっ、生意気」
どうもそれが癪に障ったらしい。五条は苛立たし気に髪をかき上げて、ベッドに乗り上げてきた。