第3章 距離2
「いやぁ、俺って優しい。お前もいい思いできるんだから、感謝しろよ」
「頼んでないんですけど」
「ねぇ、私そんなこと聞いてないんだけど」
どうやら本気らしい。いつもの部屋へ連れていかれ、呆れ切っているおれと怒り心頭の女性。飄々としながらそんなことを言ってのける五条に、こいつやばいんじゃ?と何度目か分からないことを思う。
「ありえない、抱いてくれるっていうから来たのに!」
「うっぜーなぁ。黙れよ」
きゃんきゃんと怒る女に、五条が凄む。その圧に気おされ、女はびくりと肩を震わせ口を閉じた。
「誰がお前みたいなビッチ抱くかよ。化粧くせぇ」
「ひ、ひどい…」
とんだ野郎である。連れてきたんお前じゃんと言ってやりたい。そりゃあ、ついてくる女も女だけど。
今日はいつもに増して機嫌悪いな。こんな日は大人しく従うのが一番てっとり早い。
どうも譲る気も逃がす気もない五条に、ため息を吐いて女の手をとった。
「こっち」
女は目に涙をためて、力なくおれに手をひかれる。
「ここ、座って」
ベッドに座り、隣をぽんぽんと叩く。女は大人しく従った。
五条の方をちらりと見れば、何を考えているか分からない瞳でこちらを食い入るように見ている。