第3章 距離2
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五条は来月から高専とやらに入学するらしい。寮に入るようで、家に戻ることは少なくなるとのことだった。
「寂しいか?」
にやにやとしながら聞かれ、イラっとする。
「別に」
「はぁ?お前ほんっとかわいくねー」
五条は高専に入るが、おれはと言えば五条家で過ごすことになっている。護衛という名目でこの家にきたが、はっきりいって護衛として駆り出されることは少ない。このよく分からない嫌がらせ以外でいえば、おれが無理やり着いていくくらいだ。
けれど、五条家の人間は基本的におれの存在が目に入っていないようなので、大事な会合やら会議やらは追い出されるし、なんならおれが入っていい部屋も限られている。
「それで、そちらの女性は」
今日も今日とて、女を連れてきた五条に呆れ半分で尋ねる。どうせまた見張らされるんだろう。
「あぁ、お前が今日抱く女」
なんでもないように言った五条に、空気が固まる。
「「は?」」
重なった声は、女性のものだった。