第3章 距離2
「以外でした」
女を返した後言えば、五条は少し考えた後でまた悪い顔をする。うわ、言わなきゃよかった。
「あー、童貞には刺激が強かったか?」
「そんなこと一言も言ってないし、童貞でもない」
「え、まじ?」
「嘘つくかよ」
「……、まぁ、その顔じゃそうか」
五条は納得したようで、案外すんなり信じた。
「優しくできたんですね」
「ああいうのは、優しくした方が気持ちいいんだよ。要は雰囲気だな」
「なんで?」
「は?」
訳が分からず聞けば、五条は怪訝そうにこちらを見る。
「なんで、優しくすれば気持ちいいの」
「そりゃあ、冷たくされるよりはいいだろ」
「することは一緒なのに?」
「お前、童貞じゃないんだよな?」
「うん」
「今までどんなセックスしてきたんだよ」
「どんな…、」
「いやいい、言わなくて。野郎のなんて聞きたくもねぇ」
おぇ、と吐いたふりをする五条に、やっぱりムカついて背中をたたく。今日も今日とて無下限に阻まれたのだけど。