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やさしい雨の唄(仮)

第3章 距離2



 人のセックスなんて見るもんじゃない。色々顔に出そうになるのをぐっと耐え、ひたすら早く終わらないかと思う。
 絡み合う人肌。上がる喘ぎ声。肌を打つ音。精の匂い。むっとした空気は、確かに情事特有のものだ。

 五条のセックスは、以外と優しかった。相手が彼女ではないというから、いったいどんなもんかと思っていたが、ちゃんと相手を気遣っていたからそんなことができたのかと驚く。

 汗が滑り落ちる。こめかみを伝って、顎からしたたり落ちた。五条でも汗をかいたりするのか。見た目がどこか人間離れしているから、こうして普通の人間みたいな行為をしていると何とも言えない気持ちになる。

「かわいい」

 ささやく声で、五条が言う。いくら室内とはいえ、多少なりとも距離は離れている。にも関わらず五条の声も、息遣いでさえも拾ってしまう自分の耳が憎い。
 盛り上がるセックス。それとは裏腹に、冷めていく。地獄だな。セックスなんて、嫌いだ。

 脳裏にフラッシュバックした光景と、目の前で行われている行為のギャップに、吐きそうになった。

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