第2章 距離1
そんなこんなで無理やり着いていって早数週間。はじめは一向に無視。次に逃げられるという過程を終え、どうやら面倒くさくなったのか今では会話ができるまでになった。じいさん、おれ頑張ってるでしょ。報告すれば盛大にため息をはかれた。何か違ったんかな。
じいさんはさておき、今日は初めて五条が行う任務に同行する。心底いやそうにされたが、仕事なのだから仕方がない。
「譲りたくねぇけど、1万歩譲って着いてくんのは許す。譲りたくねぇけど」
「2回言った…」
「ただ俺はお前がどうなろうが知ったこっちゃないし、死にそうになってもほっていく」
「分かった」
「あと敬語な。お前自分の立場忘れてねぇ?」
「………はい」
そうして黒塗りの車に乗せられる。ここに来て車に乗るのは初めてだ。というか、敷地から出るのが初めてだ。
「すげぇ、この車、音がしない」
「こんなもんだろ」
「そう?あ、でも確かに。連れてかれたときに乗った車は静かだったかも…」
「………」
「でも、どうかな?おれも暴れてたし。そう感じただけかも?」
しかもこの車、振動も全然ない。すごい。最近の、っていうか車ってこんなもん?キャバで黒服してたとき、嬢を迎えに行くのに乗ってた車はまぁまぁ揺れてたけど。
座り心地もいい。匂いもなんか高そう。きょろきょろと車内を見渡していれば、コホンと咳払いの音。運転している五条家の者だった。隣を見れば五条はあきれてる…というか、ひいてる?急に恥ずかしくなって、口を閉じて俯く。
でもやっぱり気になって、その後は窓の外をずっと眺めていたのだけど。