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🍆だけが襲われる世界で

第28章 いつか面白い男がいたと笑えるために


「そ。帰らないとね」
 俺は出来るだけ明るい調子で答え、スケルタの手を袖から離した。スケルタは、抵抗しなかった。
「じゃあ、スケルタをよろしくね?」
 横にずっといるスケルトンに声を掛けた。スケルトンはカタカタと音を鳴らし、首からぶら下がる金の首輪がキラキラと光った。多分、頷いてくれているのだろう。
 だが、スケルタはずっと俯いてばかりだった。こういう時、俺はなんて言うべきなのだろうか。何が、言い残せるんだろうか。
 俺は膝をついた。今にも泣きそうなスケルタの顔が見え、ごく自然にその頬に触れた。笑って欲しい。せめて、俺が去ったあとに、スケルタがいつか「面白い男がいた」と思えるような。
「ねぇ、スケルタ」俺はスケルタに呼び掛けた。「おでこに、キスしてもいい?」
「え」
 スケルタの丸い目が大きく見開いた。よく見た目にどこか安心感を抱いた。ずっと泣いている顔は、スケルタには似合わない。
「僕も! 僕もぼんにキスする!」
「その言い方はやめなさいよ……」
「おでこだもん! いいでしょ?」
 あのワガママなスケルタの見慣れた顔に安堵して、俺は小さく笑った。
「ああ、いいよ」
 でもその前に。
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