第19章 水に隠した秘め事
「キスの意味くらい知ってるよ〜。だってパパとママがしてたからね」
「そうなの?」
「うん、仲良しだからね」それからまだ力が出ないのか、隣の俺に体重をかけてきた。「ね、もう一回キスしよ」
「えっ」
その声音からでは好奇心からなのか、本気なのか分からなくて俺はスケルタへ視線を向ける。スケルタは真っ直ぐと前をみつめていた。
「だって、僕ぼんとキスしたの覚えてないんだもん」
「お、覚えていなくていいのよ……」
落ち込む様子を見て、それが好奇心の方だったと解釈した俺は、内心は大慌てだったことを悟られないように言葉を繕う。ここからでは頭しか見えないスケルタは、今は頬を膨らませているのだろう。
「じゃあおでこは? おでこにキスしていいよね?」
「そんなこと言ってないで行くよ」
俺は立ち上がった。俺に寄りかかっていたスケルタはバランスを崩してふらついたが、すぐには立ち上がって後ろをついてきた。
こうして数日一緒にいて分かっていたのは、スケルタは何もしていないと、体力が自然回復をすることだ。
自爆をしたあと、確かにスケルタの髪の毛は煤で黒くなっていたのに、しばらくするとまた真っ白な色に戻ることを俺は初期頃から気づいていた。さすが、ゲーム内のMOB。体力が単純だ。
だから俺がキ……じゃなくて人工呼吸をして目が覚めたスケルタがすぐに体を起こせたのももう驚きはしなかった。体力は回復したのだろうと歩き出せば、やはり難なくスケルタも歩いてついて来た。