第19章 水に隠した秘め事
「……スケルタ?」
肩を叩くも反応がない。俺はもう一度スケルタを仰向けにして心臓マッサージの真似事をしてみる。てかスケルトンに心臓があるのか謎だが……。
あともう一つ、蘇生方法があるにはあるが避けていたことがあった。人工呼吸だ。
そんな、二十歳にもなっていない女の子を、と思いはしたが今は躊躇っている場合ではない。そうだけど、とはいえ女の子の唇だぞ……?
俺は別の緊張感を覚えながら、覚悟を決めて大きく息を吸った。あとはスケルタの口に吹き込むだけ。一思いに唇と唇を重ね、肺に届くように息を吐き出した。
頼む、戻ってくれともう一度空気を流し込む。次には心臓マッサージをし、四回目の人工呼吸で、スケルタから反応があった。
「ん……」
「スケルタ……?」
俺はスケルタの前髪を左右に分け、顔を拭ってやる。スケルタはすぅっと、息を吹き返したのだ。
「スケルタ!」
俺は思わず抱きついてしまい、おっと危ないとすぐに離れたが、スケルタはゆっくりと体を起こし、壁に寄りかかったまま座りながら、力なく笑った。
「えへへ……ぼんもぎゅってしたかったんだね」
この人懐っこい女の子には敵わないのかもしれない。俺は自分の頭をさすりながら、ごめんと呟いた。
「スケルタにキスしちゃったわ」
「え、キス?」
「そ、口と口をくっつけることね」
この説明をするのはちょっと恥ずかしいと思いながら、スケルタの横に並びながらなんでもない風を装ってそう答えたつもりだが、スケルタはくすくす笑ってこう返された。