第8章 渓谷へ
「いってぇ……」
俺はかなり深い渓谷に落ちたみたいだった。足元が水だったとはいえ、夢の中とは思えないくらい痛い。
「ぼん〜、大丈夫〜??」
頭上でスケルタのよく通る黄色い声が降りかかる。見上げるとスケルタがこちらを見下ろしていて、矢の集団が見えない。
「あの弓矢の矢は?」
「僕が倒した!」
「そっかそっか、ありがとありがと」
「えへへ!」
本当に、スケルタがいて助かった。俺一人じゃ絶対死んでいた。
と考えた瞬間、ふと俺はこの世界で死んだらどうなるのかと思った。某ゲームなら初期リスかベットの位置に戻されるが、足元が水だったのにダメージもあったし、普通のゲームと同じとは思えない。
俺がどうしようと血の気が失せる思いでそこから動けずにいると、スケルタが躊躇いもなく渓谷を飛び下りた。
「な、おいっ!」
俺が呼び止める間もなく、スケルタも水に着地して元気よく飛び跳ねた。
「わぁ、すごいすごい! もう一回飛び下りてみよっかな!」
「それはやめなさいよ……」
命は大事にね、と俺がスケルタを見やって慌てて目を逸らした。スケルタは髪だけではなく、腕も足も服も水で濡れてしまっていて、中が透けていた……ような気がしたのである。