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🍆だけが襲われる世界で

第8章 渓谷へ


「ねぇねぇぼん、今度はどこに行く?」
 そんなことを気にもしていないスケルタが、俺の隣に並んでそう聞いてきた。
 俺はスケルタをあまりジロジロ見ないように作業台をそこに置いた。スケルタの意識は俺の手元へ移った。
「ぼん、何してるの?」
「石炭を探してるのよ」
「セキタン?」
「そーそ。その服乾かさなきゃね」
「あ、ぼんの服が濡れちゃったね!」
「アナタが先でしょっ」
「えっ」
 俺は驚くスケルタをよそに、丁度そこにあった石炭を掘り出した。ついでに鉄も出てきたからラッキーだ。
「わぁ、すごいね、ぼん!」
 俺がどんどんと石炭や鉄を掘り出すと、何が面白いのかきゃっきゃ笑いながらスケルタは楽しそうだった。まぁ、楽しそうならそれでいいか。俺は作業台に戻り、すぐに焚き火を作った。
「ほら、ここで服乾かしなさいよ」
「服を?」
「ちょ、ちょっとなんで脱ぐのよ?」
「え、乾かそうと思って」
 焚き火を置いて服を乾かしてもらおうと思っていたのだが、そうか、乾かすなら脱がなくてはいけないのかと俺の考えが足りなかったことを痛感しながら、じゃあせめて何か羽織ってよと自分の肩に手を当てて気がついた。俺、今上着着てるじゃん。
 鏡というものがないこの世界では自分の姿を確認することも出来なかったので気にもしていなかったのだが、今の俺は絵師さんにデザインされた上着に「ぼ」の服を着ているあの格好をしていた。ズボンはジーンズだとか、道理で濡れて体が重い訳だ。
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