第6章 *File.6*諸伏 景光*
「それからさっきのごめんは、あの時、キミを泣かせて傷つけてしまったことをきちんと謝りたかったから」
キミがオレのことをどう見てどう思っているのかは、関係なしに。
オレの無責任な発言の所為で、キミが泣いた。
翌日、学校を休むほど傷付けた。
キミのキレイな心を。
その事実は何も変わらない。
謝って済む問題ではないことも、重々承知している。
「……」
「これでオレの話は終わり。有難う、最後まで話を聞いてくれて」
話は簡潔に短く済ませた方がいい。
彼女の為にも。
そして、オレ自身の為にも。
覚悟はしていたけど、本人と二人きりの場所で平然を装うのは、思った以上に辛くて苦しくて、酷く切ない。
本来なら、片想いだったとしても、好きなヒトと二人きりで過ごす時間はとても嬉しいはずなのに。
これが人生初めての恋ではないはずなのに。
過去に恋人がいた時間は、確かにあったはずなのに。
オレがキミを想う気持ちは、あれからもずっと何一つ変わっていない。
それに⋯。
今高校三年生のキミは、来年の春に此処を卒業する。
そうしたら必然的に、もう此処で逢うこともなくなる。
きっと、この想いもそれで終わるだろう。
受け持つ生徒達が入れ替わると同時にまた忙しい日々に追われ、時間が忘れさせてくれるはずだ。
と、自分に期待したい。
返事がないのは分かっていたから、何も求めたりはしないよ。
望月にしたら、進路指導と偽って突然呼び出された上に、こんな話をされたら困るよな。
それでも進路指導ではなく、何の話か予想が付いたからこそ残ってくれたことには感謝しかない。
「……」
少し何かを考え込んでいるらしい彼女の様子からは、謝罪の意味が少しは伝わったみたいで安堵する。
これから先、キミとの関係が元に戻るのかは分からない。
それはキミ次第だと、キミには伝わっただろう?
オレはどんなキミも受け入れる立場でしかないことも。