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*名探偵コナン*短編集*

第6章 *File.6*諸伏 景光*


「ハア」

どうするんだよ、これから。
どう言葉にして、どう伝え直せばいいんだよ。

「自業自得だ」

自覚はあるくせに、自分自身の気持ちを認めないからこそ、溢れてしまった想い。
もっと早くに素直に認めてさえいれば、意識してこの想いを抑えられたはずなのに。
こんな最悪な形で、この想いを伝えるべきではなかったのに。
言葉にさえしなければ、望月にあんな悲しげな表情をさせることもなく、涙も流さずにいられたはずなのに。
伊達の忠告通りになった。
頼むから、夢なら覚めてくれ。
ただひたすらそう願いながら、力が抜けた身体を椅子に下ろすと、そのまま上半身を倒して机の上に項垂れた。



「…ヒロ?」
「ゼロ、か」
「どうした?顔色が悪いぞ?」
「あー……」

理由なんか言えるワケがないだろ!
仕方なしに身体を起こせば、視界に入った机はまだ涙で濡れていて、さっきの出来事は現実なんだと嫌でも思い知らされる。

「…これは?」
「触るな」
「ヒロ?」

それを目敏く見つけたゼロの指先が触れそうになったから、寸前で止めさせた。
それは初めて見た、望月の涙。
誰にも触れさせはしない。
ポケットからハンカチを取り出すと、そっと拭き取る。
泣かせてごめん。
そう、本人に直接謝罪出来る日は訪れるのか?
考えたら、気が遠くなりそうだ。

「一体、何があった?」
「……今は、言えない」

心配そうな声音に、ようやく顔を上げる。

「今は?」
「…ああ」

こう見えても、今のオレの頭と心は別の所にあって、感情は混乱の極み状態なんだ。

「想像出来なくもないが、落ち着いたら話せ」
「……是非、そうさせてもらうよ」

さっき此処から出て行ったのが望月だと、お前は知ってるんだな。
幼馴染の受け持ちが隣のクラスと言うのも、良し悪しだ。
鈍く回転する脳を何とか正常モードへと戻しながら、心の中で八つ当たりをして悪態を付いた。


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