第1章 *File.1*諸伏 景光*
「まあ、そのチャンスを一発でモノにしてみせるのが、さすがヒロだな」
「…なんで?」
私が隣に居たって分かったの?か?
「キミの友人達が、キミの名を呼んでるのが聞こえたから」
「だから、そこに座っていたのか?」
「まあね」
何時何処にいても、キミの名前を耳にするだけで、まるで条件反射かのように反応してしまうぐらいには。
「ありがと。気付いてくれて」
「「「「「!!」」」」」
オレはその表情を見た瞬間、急いで雪乃の腕を引き寄せて抱き締めた。
「その顔は反則」
「…何が?」
耳元で呟いた後、くるっと背後を振り返ったら、四人が四人共、気まずそうに視線を逸らした。
しっかり見られた!
めちゃくちゃ可愛い笑顔を!
「で、だ。これからどうするんだ?」
「…私の家、あるかな?」
「問題はそこ、だよな」
「ってかよ、先に腹拵えしねえか?腹減って、俺死にそう」
松田が自分のお腹を押さえながら、訴えた。
「重ね重ね、ごめん」
「彼女も腹減ってんじゃねえの?」
「…はい」
コクリと小さく頷く。
「まあ、メシ食いながらでも話は出来るしな」
「じゃあ、店員さん呼ぶわ」
そう言いながら、班長の隣で萩原がテーブルの上のベルを押した。
「諸伏と望月さんの半年ぶりの再会と、久しぶりの五人揃っての俺達の再会にカンパーイ!」
と、班長らしい音頭で始まった、食事会。
「……」
次々に運ばれて来る、料理にビールの数々。
あっという間に平らげられて、積み重なる皿の山。
「どうかした?」
「凄い量だな、と」
豚の角煮を口許へ運びながら、眼をパチパチさせている。
「ははは。大の男が五人だからね」
「何時もこんな感じだぜ?」
「今日はみんな仕事帰りだから、余計にな」
「ちなみに雪乃サンは、お幾つ?」
「…萩原」
デリカシーの欠片もないのか!
「みなさんと同じ歳ですよ?」
「「「「!?」」」」
四人の時間が一斉に止まった。
みんな眼を見開いて、雪乃を凝視している。
だよね。
オレも聞いた時、同じ反応をしたよ。