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*名探偵コナン*短編集*

第5章 *File.5*諸伏 景光*(R18)


「…ンっ、あ…んッ…景光っ」
「!」

激しく身体を揺さぶられながら、ゆっくりと雪乃の瞼が開いた。
名を呼ばれて律動を緩めると、シーツを掴んでいた指先がオレの頬を撫でる。

「愛して、る」
「……雪乃」
「ずっと……景光に、言いたかったの」

オンナとしての色香を全身で放ったまま、でも今にも泣き出しそうな切ない笑顔で告げられた言葉に、喜びよりも酷く胸が傷んだ。

「……」
「何時かこんな日が来るかもしれないって、ずっと思ってたから…」
「……」

やはり、か。
だが、どうして、そんなにも物分りがいいフリをする?
別れを切り出したオレがあれだけ辛い思いをしていたんだ。
別れを切り出された側の雪乃は、もっと辛い思いをしたはずだ。
約五年と言う、決して短くはない。いや、とても長い長い時間。
なのに、文句一つさえ洩らさない。

「だからあの時、景光からのあの返事を聞いて、心から良かったって思ったのも本当。景光が私との別れを選んだのは、私を嫌いになったからじゃないんだって」
「…ごめん」
「ううん。あの日から、積み重なったたくさんの思い出は何時まで経っても色褪せなくて。二人で過ごした時間の分だけ集まった宝物を捨てることも出来なくて。何時まで経っても景光のことが忘れられなくて。生死さえ分からないのに、貴方の無事を毎日祈った。時間が経てば経つほど、景光を待っていたいのかもう諦めてしまいたいのか、自分でもよく分からなくなったの」
「…それでも」
「……」
「オレ以外の誰かを愛せなかった」
「ホント、諦めの悪い、バカなオンナよね」

自嘲気味に呟く。


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