第4章 *File.4*降谷 零*(R18)
「?」
「恋人として。結婚を前提に、だ」
「………はい?」
たっぷりと五秒は沈黙した後。
パチパチと、瞬きを二度繰り返した。
「だから恋人として、俺と付き合って欲しい」
「えっ?」
「結婚を前提に」
「…どうして、私?」
「俺が、お前がいいからに、雪乃を好きだからに決まってるだろ」
「……熱は、ない?」
「ない」
「貴方、ホントに降谷零、本人?」
「失礼な。何処まで疑えば……そういえば、高嶺の花、とは一体誰のことだ?」
「ハイっ?」
「風見に聞いたことがある」
何気ない普段の会話で。
『望月は彼氏が欲しいと公言するわりに、高嶺の花とやらには勝てる人がいないそうですよ』
『高嶺の、花?』
『恐らく、望月の本命、または憧れの人かと。何処の誰かは知りませんけど、よくありがちな芸能人とかですかね?松田さんっていうオチはなさそうですし』
『本命、か』
「!」
艶のある表情が一転。
普段と違う化粧で綺麗に整えられた顔が、明らかに青ざめる。
「好きなオトコがいるんだろう?」
「!」
プイと顔ごとそらされた。
「言え」
「言わない」
「上司命令」
「パワハラ」
「…松田か?」
「アレはそういうタイプじゃない」
「……確かに」
「納得してるし」
「事実だろ」
「……」
「ん?双方共に…」
腹は立つが、確かに管理官の言った通り、俺にとって悪い縁談では無かった。
双方共に、と言うことは、雪乃にとってもこの縁談は悪い縁談では無いと言う意味か?
「……」
「『楽しみにしていろ』」
「うん?」
「そう、管理官に言われなかったか?」
「言われた」
「ならば、俺との結婚に何の問題はない。と言うことだな」
「どう、して?」
「お前にとっての高嶺の花は俺、だからだ」
「!!」
「当たり、だろ?」
「……」
「顔は素直だな。真っ赤だぞ?」
「もうヤダ!恥ずかし過ぎるーっ」
「ふっ」
手首を掴んだままだから、身体を動かして逃げようとする。
「はっ、離してーっ」
「離さないよ。雪乃は誰にも渡さない」
「…ゼロ?」
「俺は雪乃が好きだ。返事は?」
「…ずっと…ゼロが、好き」
「有難う」
そうして、長くてあまいあまい口付けを、何度も繰り返した。