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*名探偵コナン*短編集*

第4章 *File.4*降谷 零*(R18)


「…っ、はぁ……っン」

ダメだ。
止まらない。
いっそこのまま綺麗に着付けた着物を全て脱がして、この場で今直ぐ雪乃を抱いてしまいたいぐらいだ。
瞼を開けば、ギュッと固く伏せられた瞳に紅く染まる頬。
時折、重ねた唇から洩れる声の色香が半端ない。
腰がゾクゾクと反応する。
オトコとしての、俺が。
そして。
此処まで近付いたからこそ微かに香る、煙草の匂い。
彼女の言う通り、ついさっきまで、この部屋に入る直前まで、雪乃の傍には松田がいたと言う、何よりの証。

「!」

俺は勝手に決め込んでいたのか?
相手は親友の従妹で、自分にとっても妹分の存在だと。
こんな感情を抱いてはいけない相手だと。
こんな感情を抱くわけがないと。
こんな感情は気の迷いなんだと。
ただ、傍にいる時間が長いから気になるだけなんだと。
情けない。
本当は、気になるどころじゃない。
雪乃をオンナとして意識をした途端、松田に対してこんなに嫉妬するほど、何時の間にか好きになっていた。
松田を通して、警察学校時代に初めて出逢い。
数年後に警視庁公安に配属された雪乃とは何度もバディを組み、色んな任務をこなして来た。
その度に鍛え合って、助け合って、支え合って、励まし合って。
時には上司として、情に流される優しい彼女を叱咤し、泣かせたりもした。
知らず知らずのうちに積み重なった想いを自覚をすれば、望月雪乃を愛さない理由なんか一つもない。
気がつけば何時も当たり前のように、雪乃は傍にいたから。
出逢った頃から、俺達五人の傍に。
初めは親友の従妹として、距離を置いた立場で。
今は親友として、仕事仲間として、良きバディとして。
だけど、そんな感情の上にあったのは…。
ただ、雪乃が愛しいと言う想い。
松田の嫁になると聞いて、この心を支配したのは…。
雪乃は誰にも譲らないと言う、激しいほどの独占欲。

「雪乃」
「…うん?」

深く長いキスの後。
濡れた唇が触れ合えるぐらいの距離で名前を呼べば、ゆっくりと開かれた潤んだ瞳。

「俺と付き合ってくれないか?」
「…何処、に?」
「ハア」

この状況で、どうしてそんなセリフを口にする?


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