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*名探偵コナン*短編集*

第4章 *File.4*降谷 零*(R18)


「とりあえず、速攻お断りしたらいいんじゃね?」
「はーい」
「よし、5分前」
「何かもう肩凝った」

レンタルとはいえ、こんな高い着物を着るのは、成人式以来だから!

「らしいな」

くっと、吹き出したから、低い声が控え室に響く。

「あー、ダメだ。緊張して来た」
「子供かよ」
「だって、お見合いなんかしたことない!」
「…俺もねえわ」
「でしょー?」
「とにかくだ。お前はお前らしくいってこい」
「……」
「最悪、俺がもらってやる」
「バーカ」

最悪、じゃねーっての!
ホント自分のことには無頓着よねー。
イケメンに限って!

「腹は括ったか?」
「女は度胸です」
「頼むから、それ以上は止めとけ」
「どういう意味よ!」
「ほれ」

静かな廊下に追い出される。

「行って来ます」
「おう」

コクリと頷きあって、慣れない振袖姿で長い板張りの廊下を歩くと、隅々まで磨き上げられ掃除が行き届いた広い料亭に、また緊張感が身体を支配する。
背中に降り注ぐ、心配そうな視線を感じたまま。

「陣平、ありがとね」
「おーよ」

クルリと振り返れば、大きく見開いた瞳が優しく笑った。
あー、日に日にイケメンの目が超えるわ、私。
見知らぬお見合いの相手よりも、間近にいるイケメンの顔を並べて脳裏に描いてしまう、何処か呑気で冷静な私がいた。


「失礼いたします。遅くなりましたことを、心よりお詫び申し上げます」

職業柄、それなりに色んなことに嗜んで来ましたよ。
腰を落として膝を付き、両手を添えて襖を開き一礼。

「おはよう。まだ時間には早いようだが?」

このワケの分からない縁談の仲介人の聞き慣れた声に顔を上げた次の瞬間、心底驚いた。

『!!!?』

そう。
見合いの相手の顔を見て。
ウソ、でしょ??
互いに目が飛び出すほど驚いて、絶句したのは無理はない。
ってか、この場で発狂しなかったことを、褒めて欲しいくらいだわ!

「だから、言っただろう?」
「?」
「ですが…」
「正気ですか?」

二人の会話をワザと遮るようにピシャリと襖を閉めて、管理官をひと睨み。

「それは君達が決めることだ」
「降谷さん、すみません」

私と違って忙しいのに、この人は!
今は見るからに高級だろうスーツをビシッと着こなして、何時もは無造作な髪も整え、これでもかっ!って言うぐらい完璧なイケメンになっている。


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