第3章 *File.3*黒羽快斗*(R18)
「ふふっ。雪乃さんも隅に置けませんね」
「ただの幼馴染、ですよ?」
私、貴方相手に恋愛話をしたことはないと思うんだけど?
こうなるのが、目に見えて分かってたから!
でもこの人のことだから、怪盗キッドと対峙した時点で色々調べ尽くした?
それか私と知り合った時点で、私のことを調べた?
まさか、そこまでおヒマじゃないわよね?
「…本当に?」
「はい」
「今のところは」
安室さんからの問いに、私と快斗の返答が重なったが、彼の視線は快斗に向いたまま。
「なるほど」
「?」
意味有りげに頷きながら丁寧に袋に入れてくれたケーキは、私が受け取る前に隣りから伸びて来た手が引き取ってしまう。
「快斗?」
「目的地は一緒だろ」
「確かにそうだけど」
そもそもが、何でこんなタイミング良く、それもこんな場所で出会うのよ?
「頑張って」
「…何を?」
「言わずとも、分かっているはずですよ?雪乃さん、貴女にはね?」
「いーえ、私には分かり兼ねます」
「女の子は素直が一番、ですよ」
「…この人たらし」
伸びて来た大きな手のひらが、ポンポンと私の髪を撫でた。
「今のは聞かなかったことにしてあげます。彼に免じてね」
「…それは、有難うございます」
高校生の私から見て察するに、安室透は文句の付けようがないぐらいイケメンで、超ハイスペックなオトコ。
けどね、どうも胡散臭くて、人たらしで地獄耳。でもあると、私は思いますよ!
一体どんな公安よ。
日本の警察は、大丈夫なの?
でも、きっと。
私と快斗が殆ど知ることがない、公安の捜査官としての降谷零と言うオトコは、
「超優秀、なんだろうなー」
「ん?」
「何でもない」
って今、絶対聞こえたでしょ!
オマケに意味も分かってるんでしょ?
素知らぬ顔をしたままにっこり笑ったのが、その証拠!
「そうですか?では、またいらして下さいね」
「はーい。有難うございました」
「こちらこそ、有難うございました。いってらっしゃい。お気を付けて」
「…行って、きます」
今度は出し惜しみもしない、安室透スマイル全開。
ダメだ!
一人のオンナとして、素直に見惚れるわ。
一回りも歳上のくせに!
童顔イケメンは最強でしょ?
「ほれ、行くぞ」
快斗に強く手を引かれ、私は喫茶ポアロを後にした。