第3章 *File.3*黒羽快斗*(R18)
「これ、青子からのクリスマスプレゼント!」
ずっと傍で見てきた、愛情が溢れた可愛い笑顔。
「…青子」
「どうしたの?」
「悪ぃけど、それはもう、受け取れねーんだ」
夕方、仲が良いクラスメイトが10人ほど集まり青子の家で開かれた、クリスマスパーティー。
その帰り際に、一人呼ばれて手渡されかけた俺個人宛のクリスマスプレゼントを、今年ははっきりと断った。
「えっ?」
「俺が、もう限界だからよ」
「それって…」
「ごめんな」
「快斗…」
結果がどう転んだとしても。
もう、戻れない。
今までの幼馴染、には。
今までの三人、には。
だけど、悔いは無い。
去年、6年ぶりに再会した望月雪乃。
幼い頃から可愛い女の子だったのに、更に輪をかけて可愛くなって帰って来たから驚いた。
帰国子女だけでも目立つのに、その容姿とサバサバした性格で、直ぐに男子の間で話題になって噂になって。
17になった今、可愛さの中にも綺麗さも際立って来た上にスタイルも良くて、勿論モテる。
本人の自覚は全く無い、けどよ。
「青子じゃ、ダメなの?」
「……」
「雪乃ちゃんより、青子の方がずっと快斗の傍にいたのに?」
「…時間は、関係ねーから」
「……雪乃ちゃんは、白馬君と付き合ってるんじゃないの?」
「白馬に直で確認したら、それはねーよ」
「青子はずっと、快斗だけが好きだよ」
「ありがとな、青子」
真っ直ぐに向けられた、青子の純粋な想い。
それでも俺の心は、揺らがない。
雪乃が好きだと自覚した、幼いあの日から。
そう、一度も。
今の微妙な関係を壊してでも、雪乃の全てを手に入れてしまいたいと願ってしまった。
制服姿を初めて見た、高校入学式のあの日に。
「じゃあ、最後に受け取って?」
「悪ぃ。これ以上、誤解はさせたくねーんだ。だから、本当にごめん」
絶望にも似た、酷く傷付いた表情の青子の目から涙が溢れ、その手のひらからクリスマスカラーで綺麗にラッピングされた包みが落ちたけど、俺は謝罪の意を込めて頭を下げると、そのまま青子の家を出た。