第3章 *File.3*黒羽快斗*(R18)
「おや、こんにちは」
「こんにちは。ってか、こんな日に本業休んで何してるんですか?」
「いやだなあ、雪乃さん。今日がクリスマス・イブだからこそ、本業はお休みしてるんですよ」
うっわ!
ちょー胡散臭い笑顔!
「…こっわっ」
「何か言いました?」
「いえいえ。安室さんの気の所為です」
身長差の高い場所からの視線が痛い。
「今はそういうことにしておきましょうか」
「ねー」
「どうして、男の僕がトナカイかって?」
公安の部下には見せられないねー。
絶対サンタさん似合うのに、ちょー勿体ない!
梓さんの真っ赤なサンタさんは可愛い、けれど。
クリスマス・イブ当時の夕方にもなれば、日本全国各地の街中は勿論のこと、テーマパークも駅も各家庭も恋人同士もこれからが本番と言わんばかりに装飾品がクリスマスカラーに染め上がり、あちらこちらで聞き慣れたクリスマスソングが鳴り響いている。
「エスパーですか?」
「視線が物語っていますよ」
「…写真撮りたい」
「それだけはご勘弁下さい」
少し困った顔。
イケメンはいいなー。
どんな姿も表情もサマになるんだから。
「…まだ、キライ?」
赤、が。
赤色、が。
赤井秀一、が。
「…否定は、出来ませんね」
「…そっか」
「全く…君が落ち込むことはない。 本当に出逢った頃から、君はブレずに変わらないな」
「それって…褒めてる?」
瞬時に彼を纏う空気がガラッと変わったから、降谷零としての言葉だと思った。
「もちろんですよ。ご注文の品は5号サイズと7号サイズのどちらも生クリーム、でしたよね?」
「はい」
財布に入れていた、代金は既に支払い済の注文引換の用紙を手渡す。
私の後ろにも人が並び始めた。
また、雰囲気と口調が、何時ものポアロの店員さんに戻る。
「今からパーティーですか?後ろの彼もご一緒に?」
「はい?」
「どうも」
「何時の間に」
背後を振り返れば、快斗がいた。
一般の女相手に、気配を消して近付くのは止めてよね。
「あっちもこっちも正体隠して胡散臭い」
「「ん?」」
「何でもありませーん」
ブンブンと頭を振って、誤魔化しておく。