第3章 *File.3*黒羽快斗*(R18)
「な、何よ。今の!」
あれは、告白?
まっ、まさか、ね?
一生懸命笑顔をこの顔に貼り付けたまま、咄嗟に出たのはあんな返事で。
閉まったばかりの玄関のドアの内側に背中を押し付けると、ついさっき快斗が突然放ったセリフが頭の中でグルグルと何度も再生される。
「だって…」
貴方が好きなのは、私と違ってずっと貴方の傍にいたもう一人の幼馴染、中森青子。
そうでしょう?
普段から何時も傍にいる二人がちょっとした言い合いやじゃれ合ってると、クラスメイトの男子達に直ぐにからかわれる。
その度にやんわりと『青子とはただの幼馴染』と、快斗が否定してるのは知ってる。
青子はと言うと、口では否定してもその表情はとても嬉しそうで、恋する女の子そのもので。
傍にいる私が何の反応を見せなくても、それは明らかに私への牽制。
私がいない六年の間に、二人はもう周りの公認の仲になってたから、やっぱりな。って。
ショックは大きかったけど、日本に帰れると決まった時点で覚悟もしてた。
再会の喜びと、予想通りの展開の悲しみを同時に味わったのが、去年の高校の入学式当日。
「やっぱり、間違えた」
江古田になんか、行かなきゃ良かった。
そしたら、目の前であんな仲の良い二人を見なくてすんだのに。
まだ、自分の勝手な想像の範囲内ですんだのに。
おまけに二年連続三人揃ってクラスメイトとか、ウチの学年のクラス替えは一体どうなってんのよ?
「素直に帝丹にしとけば良かった」
今となっては全て、後の祭り。
だけどさ。
告白は、ちゃんと本命にしなよ?
ねえ、快斗。
私は練習台?
冗談でも、笑えないよ。
だって、それでも私はまだ…。