第3章 *File.3*黒羽快斗*(R18)
「で?君は何時まで宙ぶらりんの二股でいるつもりなんですか?」
「だーかーらー。そもそも元々が二股じゃねえっつうの」
進路調査のプリントを担任に無事提出した後、雪乃さんを家まで送り届け、内側から玄関の鍵が閉められたことを確認して踵を返せば、隣の自宅の塀から姿を現しながらも不貞腐れた顔。
「心配しなくても、僕から見たらそうとしか見えませんよ。君がワザとのように表立って見守っている中森さんと、陰からそっと見守っている雪乃さん。どう考えても二股です」
「二人ともが幼馴染だから、だろ」
「それはお二人のどちらかに対して恋愛感情がなければ、の話です」
「で、結局お前は何がしたいわけ?」
「僕は雪乃さんの味方、なだけですよ」
「それは恋愛感情を含んで、の話か?」
身長が変わらない彼の眼に、真剣さが宿る。
「君には関係がないことです。僕の想い人が誰であろうと、僕は君の代わりになれはしませんし、君は僕の代わりにはなれませんから」
「…この屁理屈野郎が」
舌打ち付きの毒吐き。
「お褒めに預かり光栄です」
では。と、近くで待たせている迎えの車へと向かった。
これで少しは進展するといいのですが。
傍から見ていてとても焦れったい、黒羽君と雪乃さん、二人の関係が、ね。