第3章 *File.3*黒羽快斗*(R18)
「まだ迷っているんですか?」
「そりゃ迷うでしょ?まだ17歳よ、私」
「僕も貴女と同じ17歳、なんですが?」
「貴方と私を一緒にしないで。う〜ん」
提出期限が本日の、進路調査のプリント。
放課後、窓際の自分の席に座ったまま頬杖を付いて、一応は記入済のプリントとにらめっこ。
「雪乃さんの真の悩みは進路ではなく、恋の行方。なのでは?」
「うっさいなー、白馬は」
「くくくっ」
前の席にこちらを向いて座る美男子は、顔を上げた私と視線が合うと楽しげに笑った。
毎度ながら、腹立つぐらいイケメンだし!
「…勝敗はとっくについている、のにね」
物づいた頃からの想い人で現クラスメイトでもある、ウチのお隣さん兼幼馴染の顔がチラつく。
小4~中3の間、私は父親の転勤で英国にいた。
この微妙なお年頃に此処にいなかったことは、恋愛に関してのブランクはかなーりキツイ。
おまけに私の想い人には、同級生の可愛い女の子の幼馴染がもう一人いる。
勿論、普段は彼女とも仲が良い幼馴染として接してる。
お互いに、幼い頃から恋のライバルだと知ってはいる、けれど。
それに!
彼は普通にモテるから、校内にも恋のライバルはかなり多い。
「雪乃さんの場合は、大逆転サヨナラ満塁ホームラン。ってのも、有り得るんじゃないですか?」
「…例えがめっちゃ昭和なんだけど。実は中身が中年のオジサン、とか止めてよ?」
「誰がオジサンですか」
「って、白馬に決まってんじゃん」
「「……ぷっ」」
短い沈黙の後、二人で同時に吹き出した。