第11章 電話越しの彼
どれくらい経っただろう。
相変わらず妙ちゃんに相手にされてない近藤くんと銀八先生に鬱陶しがられてるさっちゃん
酔った人たちを介抱する山崎くんと新八くん
そんな彼らを見つめていると妙ちゃんがこちらにやって来た
「もうほんと、いつになったら動物園に帰ってくれるのかしらあのゴリラ」
『一途だね…近藤くん』
そう言って微笑むと妙ちゃんは目を丸くして私を見つめた
「桜ちゃんって意外とお酒強いのね」
『そう…なのかな?自分じゃよくわかんないや』
だけどかなり飲んでしまったかもしれない。
気づくと目の前のテーブルには空のグラスがズラリと並んでいた
ふと時計を見ると時刻は夜8時を指していて、辺りは酔いつぶれた人達で溢れ返っていた
だけど相変わらずそこに沖田の姿はなかった
「沖田くん…来ないわね」
『うん…みたいだね』
「あの…桜ちゃん一応聞いてもいい?」
そう言って少し言いにくそうに顔を歪める妙ちゃん
「その…沖田くんと別れたって本当?」
あ…そっか。歩兄に聞いてるんだっけ?
『うん…本当だよ。2週間くらい前にね』
「…後悔してないの?」
『…』
後悔…
そう聞かれると答えにくいな…。
『会いたいかって言われたら会いたくないし…かと言ってもう2度と会えなくてもいいのかって言われると…それも嫌だ』
「…」
『どうしてこんな…矛盾した気持ちになっちゃうんだろう…』
私は一体、沖田と…どうなりたかったの?
俯く私に妙ちゃんはクスッと小さく笑う
『妙ちゃん?』
「…ごめんなさい、ちょっと安心しちゃって…」
『安心?』
「だって桜ちゃん、まだ沖田くんのこと好きみたいなんだもの」
妙ちゃんの言葉に私は目を丸くして彼女を見つめた
「本当に相手のことが好きじゃなくなったら"会えなくなるのが嫌"なんて普通は思わないものよ」
『…え』
「でも桜ちゃんは、今日までずっと沖田くんのこと考えてたんでしょう?…それって矛盾とかじゃなくて桜ちゃん自身の本当の気持ちなんじゃないかしら」
『…ッ』
妙ちゃんの言葉に私は顔が真っ赤になった