第11章 電話越しの彼
翌日、私は以前妙ちゃんに教えられた銀八会の会場の前にいた
『確か…ここだよね?』
少し不安になり立ち竦んでいると
「よォ吉野、」
私の名前を呼び、前から歩いてくるその人物に忽ちその不安は掻き消された
『久しぶりっ土方!』
「早ェな」
『うん、少し早めに出てきたから』
「…んじゃあとりあえず店ん中入っとくか」
土方の言葉に頷き2人して店の中に入る
『そう言えば土方こそ早くない?もしかして土方も道に迷…いだッ』
最後まで言い終える前に"お前と一緒にすんな" と言って頭を叩かれた
『…?じゃあどうして』
「幹事だからだよ、俺が」
少し強めの口調でそう言った土方を目を点にして見つめる
『え、土方幹事なの?私はてっきり銀八先生なのかなと…』
「あのズボラ教師にんなもん務まるわけねーだろ?」
スパンッと宴会部屋の襖を開けると何故かそこには既にZ組の皆が集まっていて、さっそくお酒を飲み顔を真っ赤にする銀八先生の姿もあった
あれ…銀八会って6時からじゃなかったっけ?
「おー土方くん吉野遅いぞ~。ったく幹事なら誰よりも早く来とくのは常識だよ?今はまだ学生だから許されるけど社会人になったら出来て当たり前のことって言われるからね」
あまり呂律の回っていない喋り方で土方に説教する銀八先生を呆れながら見ていると近くでピキッと何かが音を鳴らす
『…土方?』
「なぁ?吉野。…やっぱこんな大人に幹事は無理だろ?というか…
ぶち殺したくなるだろォ?」
『土方ぁああ!落ち着いて!!』
「はーなっせ!あの天パだけは許さねェ!!つーか勝手にてめぇらが早く来ただけだろうが!誰のせいで幹事なんてめんどくせぇこと引き受けてると思ってんだ!!」
怒りMAXの土方を抑えていると突然後ろから肩を叩かれ振り向いた
『え、み、美々ちゃん?』
「久しぶりね桜ちゃん」
そこにいたのは山本美々ちゃんだったのだ
『美々ちゃん…何かすごく大人っぽい』
高校の時から美人でスタイルも良かったけど、今はまた一段と綺麗になっている。
「そう?モデルの仕事してるから…かな?」
『モデル!?』
「高校卒業してからスカウトされちゃって…一応雑誌の専属モデルやらせてもらってるの!」
『へぇ…!』
すごいなぁ…。
それにぴったりだ…。