第8章 本音
そう言えば…琴梨ちゃん、さっきどうして泣いてたんだろう。
『琴梨ちゃん』
「ん?」
『さっき…何かあったの?』
そう言うと彼女は少し困ったように笑った
「実は…彼氏と喧嘩して…」
『喧嘩…まだ仲直りしてないの?』
「うん…ていうか、振られちゃった」
『え…ん、え?…え、ええええ!?』
「驚き方独特やね…」
え、そんな!この前まであんな幸せそうだったのにどうして…!
「ええよ、アタシが悪いんやし」
『悪いって…』
「アタシの彼氏大学でサッカーやってて、今日その試合の応援に内緒で行く為にアタシすごく張り切ってた…」
「その試合が終わって彼に会いに行ったらめっちゃ驚いてて…」
『彼氏さん、喜んでなかったの?』
「…どうやろ…。でも彼と同じ部活の先輩がいて挨拶に行ったとき…」
- え、森田彼女いたのか!? -
- 可愛いじゃん!森田の奴そんな話1度もしたことねェからビックリしたぜ -
- いつから付き合ってんの? -
そんな先輩の話を聞きながら彼はずっと黙ってた。
「それでね、先輩がいなくなった後、彼と話したんや」
- ねぇ、大学の人達に私のこと話したことないん? -
- 特には話してない…な -
- 何で…だって告白とかされた時どうやって断ってんの? -
- 告白断るくらいでお前の名前なんかいちいち出さへんやろ -
- え…? -
- あとさ、…もう勝手に試合観にこんといてほしい…-
"お前といるとこ…大学の奴らに見られたくない"
『えええ!?』
「まぁ、この後はご想像にお任せします」
幾ら何でもそんな言い方ないじゃん!
「アタシも気持ちが重すぎるって思われてたんかもしれへんし…」
『そそそんなことないって、絶対!』
「でもね…アタシ見ちゃってん。アタシと話し終えてからサッカー部のマネージャーと話してる時の彼の表情を…」
『そ、それって…』
「お互いめっちゃ頬染めて、笑い合ってた…。何かそれ見ちゃったら…彼のアタシに対する態度にも納得出来ちゃって…」
言いながら琴梨ちゃんの目からまた涙が溢れ出した
「悔しかったけど…あの時は涙なんて出なかった。でも今は辛くて…苦しいぃ…」
『琴梨ちゃん…』
この時私は…彼女に何て声をかけることが正解なのかわからなかった