第8章 本音
その様子を不思議に思っていると琴梨ちゃんは小さく呟いた
「…笑わないでね…」
『?別に笑ったりなんか…あ、でも普段は標準語で喋ってるよね?どうして…』
そう言うと琴梨ちゃんは小さな声で言った
「だって…恥ずかしいもん」
えっ…。
「私…関西の高校出身なんだけど、こっちの大学に通ってるうちに何だか関西弁が少し恥ずかしくなっちゃって…」
『それで普段から標準語を?』
「うん…。別に関西弁が嫌いなわけじゃないよ。でもこうやって気を抜くとすぐ方言出ちゃうし…関西弁だからキツイ性格って言われたことも過去にはあって…だから地元以外ではあまり関西弁で喋らないようにしてるの…」
『…』
「…私、変だよね…」
『うん、変だよ』
「肯定された!?」
紅茶の入ったカップをテーブルに置き、琴梨ちゃんを見つめた
『だって方言って私は寧ろ羨ましいもん!』
「羨ましい?」
『だって標準語はみんな喋れるのに地方の言葉は私には真似出来ないし…喋ってもきっと違和感満載だし…そういう地域だけの方言とかって…何だか憧れるよ…』
「…でも関西人って喋り方のせいで性格キツイって言われたりもするんだよ?」
『それは関西人を知らないからだよ』
「えっ?」
『私も琴梨ちゃんに会うまで関西のことはよく分からなかったけど…』
『明るくて、話しやすくて、フレンドリーで面白くて…一緒にいても全然飽きないの。私、琴梨ちゃんといるとすごく楽しくて安心する!』
"私、琴梨ちゃんと友達になれて良かった"
そう言って笑うと琴梨ちゃんの頬には涙が伝っていた
『え…え?ご、ごめん!何か変なこと言っちゃったかな…』
「グズッ ううん、違うの。そんな風に言われたの…初めてだったから…嬉しく…て!!ヒッグッ」
『…ねぇ、琴梨ちゃん…。これからは私の前では無理して標準語で喋らなくていいよ…』
「えっ…」
『琴梨ちゃんの関西弁、可愛くて好きなんだ。…琴梨ちゃんは関西人で初めての私の友達だもん、ありのままの琴梨ちゃんが1番輝いてるよ』
次の瞬間、琴梨ちゃんは私に抱きついた
「桜ちゃん…台詞がもうイケメン過ぎる…。桜ちゃんが男だったら今絶対惚れてるし、総悟くんが惚れたのもめっちゃわかる!!」
『あははッ、伊達に高校3年間沖田を口説き続けたわけじゃないよ』