第8章 本音
静まり返った部屋には少しの間、琴梨ちゃんの泣き声が響いた
「ごめん…暗い話になっちゃって…」
『ううん、私の方こそ何もしてあげられなくて…ごめんね』
あれから少し時間が経って彼女が落ち着いた頃、私は帰りの電車の時間が迫っていることに気づき帰る用意をしていた
「またいつでも遊びに来て!歓迎するから」
『うん!ありがとう』
「それから…総悟くんのことやけど…総悟くんもきっと桜ちゃんのこと大好きやと思うから…その、上手く言えへんねんけど…」
『うん、大丈夫。わかってるよ』
やっぱり沖田には私の口からちゃんと本音を伝えなきゃいけない。
それで沖田がどんな答えを出しても、きっと後悔はしないと思う。
『琴梨ちゃん…私、琴梨ちゃんの彼もきっと何か訳があるんだと思う…』
「え?」
『自分の口からちゃんと伝えれば、彼もきっと本当に思ってることちゃんと話してくれると思うよ…だから、
負けないで』
「桜ちゃん…うん!」
私、やっとわかったんだ。
沖田が私のこと何とも思ってないだとか、高杉とキスして怒ってるだとかは全部私が勝手に言ってるだけで、本当のこと、沖田からは何も聞いてないってこと。
もう1人で悩むのはやめた。
これからは堂々と沖田に会いに行ってやる!
琴梨ちゃんの家を出た後、帰りの電車の切符を買う為、駅に向かった
今度こそ…沖田の本音をちゃんと聞くんだから!!
そう決心しながら改札を通ろうとした時
『うぎゃッ!』
突然後ろから背負っていたリュックを引っ張られた
『ちょ、何す…え?』
その時、振り向いた私の目に映ったのは
「…あ…ぶねェ…」
息を切らしながら私を見つめる沖田の姿だった
『沖田…何でここに』
「休憩時間使って抜けてきたんでィ、すぐ戻らねェといけねーけど」
『…そう…なんだ』
「桜、話があるんでィ」
『え…』
話…って、なんだろう。
聞きたいような、聞きたくないような…
いや、だめだ。
私はもう逃げないって決めたんだから。
沖田とはちゃんと本音で話すって…
『私も…』
「!」
『私も沖田に話がある』
そう、決めたんだから。