第1章 再会
あれから数分、相変わらず楽しそうに話す可愛い女の子と沖田、その様子を後ろの席から盗み見る私、のことを若干引きぎみに見る土方
もちろん土方は沖田たちには気づいていない。
お店が騒がしいのもあって沖田たちの会話は所々しか聞こえないけど女の子の表情からすると二人とも良い雰囲気なんだろうと思う。
あの子…誰なんだろう。。
妹…なわけないし、友達かな?
「ねぇ総悟君!見てこれ可愛い」
女の子は沖田にケータイの画面を見せて言った
「普通…」
「えー可愛いじゃん!」
"総悟君"か…
私ですら呼んだことないぞコノヤロー。。
「剣道の練習…調子どう?」
「まぁまぁ…つっても来週の試合までは気ィ抜けられねーけど」
「そっか。応援してるねッ!」
沖田…来週試合なんだ…。
私には…何も言ってくれてない。
「でも総悟君、本当に部活熱心ていうか… そこだけは凄いと思うよ」
「そこだけってなんでィ」
「それにあたし総悟君が剣道してるとこ観るの結構好きだよ」
ズキッ
笑顔で話す女の子の言葉に胸が痛んだ。
わかってる、これは嫉妬だ。
沖田がモテることなんて知ってたし、嫉妬だってこれが初めてなわけじゃない、なのに…
自分ではなく他の女の子といる彼を見るのがどうしようもなく辛い。
付き合うってこんな気持ちになるんだなぁ。
こんなに苦しい思いするんだったら
沖田と付き合わなければ良かった…なんて
私は本当に自分勝手でわがままだ。
「吉野、大丈夫か?」
『うん…全然大丈夫だよ。ちょっとトイレ行ってくるね』
そう言って沖田に気づかれないように席を立った
沖田に会うことを楽しみにしていたのは私だけで沖田は私なんてもう好きでもなんでもなくなっちゃったのかな…
『片想いの時より辛いかも…』
考えれば考えるほど悲しくなって上手く笑うことも出来なくなった私の目から静かに涙が流れた