第8章 本音
と、結局ミツバさんに沖田のバイト先までの道を教えて貰って来てみたのはいいけど…。
何て言って会えばいいの!?
『"あ、沖田久しぶり!偶然だね"…は不自然過ぎるし』
『"沖田に会いたすぎて会いに来ちゃった!"とか絶対引かれるし』
『"高杉にキスされたけど、それだけなの!"』
駄目だ…直球すぎるしどれも上手く話せる気がしない。
沖田のバイト先であろうお店の窓を少し覗いてみるが、沖田の姿は見当たらない
私は溜息をついてお店の壁にもたれかかった
うまい具合に沖田が店から出てきてくれたりしないかなぁ…。
そう思っていた次の瞬間、
「いらっしゃいませ」
『!』
ショートヘアーの私と同い年くらいの店員さんがお店から出てきた
「お一人様ですか?」
『え、あ、はい…!』
勢いでついそう返してしまった私に店員さんは笑顔で言った
「では、中にどうぞ」
『あ…はい』
どうしよう、普通にお客になってしまった!
けど、その方が寧ろ沖田に会いやすいのかも…。
お店の席に座りメニューを眺めながら横目で沖田を探す
うわぁ…やっぱりいないな沖田…。
もしかして休憩中とかだったりするのかな…
「ご注文お決まりですか?」
『え!あ、えっと…』
先程の店員さんに聞かれ慌てて再度メニューを見る
何にしようかな…、あ。これ美味しそう
ていうか…
パンケーキ1500円!?
あれ、私今お財布いくら入ってたっけ…この喫茶店こんな高いお店だったんだ…。
メニューを見つめたまま遠い目をする私に店員さんが言った
「よろしければ、こちらのサンドイッチなんていかがですか?お値段も500円ですし、オススメですよ。」
『あ、じゃあそれにします!』
何て気の回る店員さんなんだ。
同い年くらいの人とは思えない!
「では、少々お待ちくださいね」
『はい…』
店員さんに会釈して大人しくサンドイッチが来るのを待つ
『…じゃないよ!』
何普通に落ち着いてんの私は!!
自分の両頬をパチンッと叩いて再度辺りを見回す
やっぱりいないな…。
こんなんだったら来る前に一言連絡入れておけば良かった…
まぁ、実際そんなに余裕はなかったんだけど
結局会えないんじゃ、意味無いよね…。