第8章 本音
あの後、終始情緒不安定だった私は歩兄に外の空気を吸って来るように言われ家を追い出された
外はこんなに天気がいいのに私の気分は全く晴れない
高杉がウチに来たあの日からもう1週間も経つのに、私にはまだ昨日のことのように思える
心臓もまだバクバクいってる…
でもこれは恥ずかしいとか…そういうのじゃなくて
驚きと切ない気持ちが入り混じったような…何だか複雑な感じ。
沖田とも連絡取ってないし、勿論高杉とも会ってない
このままじゃいけないってことはわかってるけど、
まだ今の私には沖田とも高杉ともちゃんと話せる自信が無い
溜息をつくと突然私の鞄の携帯が音を鳴らした
『電話だ…』
着信画面の表示を見た瞬間私は目を見開きその場に固まった
着信 "高杉晋助"
『…ぇえええええ!?』
何でこのタイミングで電話!?
たった今話せる自信ないって言ったよね作者!!
どどどうしよう!
お、落ち着け私!
とにかく出ない方が気まずいし、いつも通りの感じで喋れば全然大丈夫だよね!?
意を決して電話に出る私の声は実に弱々しいものだった
『も、もしもし?』
「…吉野か?」
『た、高杉!!ひさひさひさしぶり〜ど、で、どうしたのげん、き?』
終わった…。
もう日本語も喋れなくなってしまった
きっと電話の向こうの彼は引いているに違いない
そう思って遠い目をしているとしばらくして高杉の方から話し始めた
「いや…ちょっと…気になってよ」
『え…』
「…オメーこそ…大丈夫か」
『…う、ん?や、ぜざぜん、全然大丈夫!』
「…大丈夫じゃねェなその様子じゃ…
この間は悪かった、いきなりあんなことしちまって…」
そう言った高杉の声は気のせいか少し震えてるような気がした
『高杉…あの、私っ』
「あん時はオメーがあまりにも沖田沖田っつーから…こっち向かねェのが悔しくてよ…」
ちょっと待って
「俺ァ理由がなくてあんなことしたわけじゃねェから…そこんとこはっきりさせたくて電話した」
今彼は…何を言って…
『高す…』
「吉野、」
「俺はお前とは…もうダチにも元クラスメートにもなれねェ
お前がどれだけ沖田を好きでも
俺はお前が好きだ」
この状況を一瞬で理解するにはその言葉はあまりにも唐突過ぎるものだった