第7章 強がり少女【沖田視点】
夜9時を回り、客が全員引けると高橋さんは店のシャッターを閉めながら言った
「ごめん沖田くん、はるちん。あたし今日早く帰らなくちゃいけないの、残りの片付けと戸締り2人にお願いしてもいいかしら?」
「はい、わかりました」
「ごめんね、じゃあお先にお疲れ様」
そう言って高橋さんは店を出て行った
残された俺と空道さんの間に一瞬妙な空気が流れた
「あの…沖田くんも先に帰っても大丈夫ですよ。後は私がやっておくので…」
そう言ってテキパキと片付けをする彼女の背中を見つめ以前に高橋さんが言っていたことを思い出した
- 何でも1人でやろうとするのよね -
「…」
俺は黙って彼女の手から積み重ねられた食器を奪った
「…え、沖田くん…」
「別に…急いでるわけじゃねーし、俺も最後までやりまさァ」
「…でもッ」
「それに、2人で任されたんだからちゃんと2人でやらねェとダメだろィ?」
俺の言葉に彼女は目を見開き、そのまま静かに頷いた
"ありがとうございます"
小さな声で聞こえてきたその言葉に俺は不思議と満足していた
自分の口から出た言葉に正直自分自身が一番驚いている
だけどきっとあいつなら、桜なら同じことするだろうなって思った
あいつはそういう奴だから…。
だから俺も知らねー間に影響されちまったのかもしれねェ。
片付けを終え、2人して店から出て夜道を歩いた
「…もう夏も終わりですね」
「もう秋か…早ェ」
夜空を見上げながら呟くと空道さんは静かに話し始めた
「高橋さんから聞きました…来月にはやめてしまうんですよね…?」
「あぁ、まあねィ。元々短期で入るつもりだったし、一時的に金を稼ぐ為のバイトだったからねィ」
「資格かなんかの為のお金ですか?」
「いや高校の時のクラスの集まりの為の金みたいなモンでさァ」
「あ、なるほど」
「まァ大学もほとんど地元だし、ほとんど全員よく見る顔なんだがねィ…滅多に会えねェ奴も来るんでさァ」
空道さんは少し考えた後、人差し指を立てながら言った
「もしかして好きな人…とかですか?」
「……好きな人っつーか、彼女…だねィ」
少し控えめに言えば空道さんは目を点にして俺を見つめた
「沖田くん…彼女いたんですか」
「…意外?」
「いえ、寧ろ彼女とか複数人いてそうな、たらし系かと」
「オイ」